研究概要

心的ストレスと腰痛の関係
Q1. ところで、腰痛持ちが多いって本当?
A:生涯有病率は8割を超え、4人に1人の方が腰痛で仕事などを休んだ経験があります。

腰痛の障害有訴率:全国6万5千人の調査(Fujii T、Matsudaira K、EurSpine J 22、2013)


我々が2011年に行った全国6万5千人を対象とした大規模インターネット調査では、腰痛を一生のうちに経験する人の割合は83.4%でした。 注目すべきは腰痛で仕事(家事、学業を含む)を休んだことのある方が4人に1人もいらしたことです、4日以上連続して休んだ方は10人に1人いらっしゃいました。

Q2. では、腰痛はなぜ起こると考えられるのでしょうか?
A. 腰への負担(人間工学的要因)に加え、ストレスなどの心理社会的要因が、新たに腰痛が発症することにも慢性化してしまうことにも影響することがわかってきました。

今まで推進したJOB study※と国際協同疫学研究(CUPID study※※)の結果をまとめると、日本 人労働者における支障度の高い腰痛の危険因子は次のようになります。

※JOB study(Japan epidemiological research of Occupation-related Back pain study):勤労者の腰痛の実態を把握するとともに、特に「仕事に支障をきたす非特異的腰痛」の新規発症および遷延化の危険因子を探索することを主目的とした前 向き研究。2005年9月からの半年間、首都圏の多業種勤労者9, 307人に対して、腰痛に関する多目的アンケートを行い、ベースラ インデータを収集した。同意の得られた5,310人に対して1年後および2年後におけるベースライン時からの作業状況、腰痛状 況等について追跡調査を実施した。

※※CUPID study(Cultural and Psychosocial Influences on Disability):英国サウサンプトン大学のDavid Coggon教授を チーフに、心理社会的側面が腰痛を含む筋・骨格系に関わる愁訴や障害に与える影響を、文化の異なる世界18カ国で比較検討する ことを主目的として推進した国際比較共同の前向き研究(Coggon D, et al. PLoS One 7:e39820, 2012 )。CUPID-Japan では2008年春に、運送、営業職、看護職、事務職の4職種の3,187名に多目的アンケートを行い、2, 651名のベースラインデータ を収集し、1年後と2年後に追跡調査を行った。

Q3. なぜストレスが「ぎっくり腰」といった腰痛が新たに発生するリスクを増やすの?
A. 持ち上げ作業時に心的ストレスが加わると、腰部負担(椎間板圧縮力)が高まります。

被験者に椎間板の圧縮力を計測する機器(三次元動作解析装置)をつけ、スクワット法による持ち上げ 動作時の圧縮力を測定しました。その結果、椎間板の圧縮力は平均で63N/kgであり、椎間板を痛め るリスク(約55N/kg )を超えて負担がかかることがわかりました。さらに被験者には心理的ストレス のかかる課題を出し、それを解いてもらいながら持ち上げ動作をしてもらいました。具体的には2桁の 暗算を解いてもらい、解答が奇数の時だけスクワット法を選択してもらいました。これは単純な持ち 上げ動作による腰への負荷(メカニカル・ストレス)に加え、心理的ストレスを追加した形の実験です。 結果、椎間板の圧縮力はスクワットを単独で実施した場合の63 N/kgをさらに上回る結果となり ました。その理由は、姿勢バランスが微妙に乱れることにあると推察できました(国際医療福祉大学 勝平純司先生との共同研究)。

Q4. なぜ心理社会的ストレスによって腰痛が慢性化するのでしょうか?
A. 心理的ストレスによって、脳を主とする中枢神経の機能に異常が生じ、痛みを抑制 するシステムが働きづらくなったり、抑うつや身体化が強まったりする可能性があると考えています。

心理社会的要因の強い重症の慢性腰痛の患者(長期休職者)の脳をFDG–PET(2[-(18)F]fluoro- 2-deoxy-D-glucose-positron emission tomography)という脳代謝(機能)をみる検査を行った研究(東京都健康長寿医療センター研究所 石井賢二先生らとの協同研究、 12例の集団解析)では、健常な人たちの脳代謝と比較したところ、扁桃体や海馬付近、および小脳の代謝が亢進していました。(写真A-1)。

一方、前頭前皮質では脳代謝低下が確認され、いわば機能低下がみられました(同B-1)。 そして、認知行動療法を中心としたストレスを軽減するための治療を運動療法も加味して実施し、腰痛および抑うつ、その他の身体化徴候がよくなった後に撮影した画像では、治療前の画像と比較し脳代謝にも明らかな改善を認めました(同A-2、B-2、8例の集団解析)。

この変化を「脳機能が改善した」 と言い切るには、さらなる検証を必要とし注意が必要ですが、少なくとも心理社会的要因を抱えて腰痛を理由に休職している患者群の一部は、脳dysfunctionがあることを示唆しうる所見では、と考えています。

いわゆる腰痛症の多くは、非特異的腰痛と呼ばれ、原因不明とされてしまいますが、 我々は、「運動器である脊椎(腰)と脳、両方の不具合(dysfunction、機能的な異常) が共存しうる状態」という新たなコンセプトを提案しています。

具体的には「不良姿勢や持ち上げ動作によるメカニカル・ストレスが運動器(脊椎)の機能的な 不具合(dysfunction:椎間板内の髄核移動や椎間関節の微小な不適合など)をもたらし、 仕事への不満や周囲のサポート不足といった心理社会的要因に伴う心理的ストレスが脳機能の不具合(dysfunction:中脳辺縁系でのドパミン・システムの異常など)を起こすことがある〔Q4参照〕。

両者はしばしば共存し、その共存する割合は同じ人でも曝露される環境因子(メカニカ ルおよび精神的ストレスの状況)に依存する」という理論で腰痛を捉えるようにすると“よくわから ない非特異的腰痛”の顔が見えやすくなる、言い換えれば対策を講じやすくなる感触を得ています。

一方、心理的ストレスは、脳dysfunctionを介するメカニズムとは別の理由で腰痛が起こりやすくなる(脊椎dysfunctionへダイレクトにつながる)可能性もあることをQ3で解説しました。

Q5. 今後の腰痛対策はどのように行うとよいのでしょうか?
A. 姿勢や動作への対策と心理的ストレスへの対策を並行して行うことが必要です。

我々(東京大学精神保健学分野 島津明人先生らとの協同研究)は東京23区、大阪市、名古屋市の第3次産業 従事者を対象(n=3, 899、平均45歳、男性51%)に、ワーカホリックと抑うつおよび腰痛との関係を分析 してみました。具体的には、年齢、性別、肥満、喫煙、学歴、運動習慣、肉体労働、仕事の負担度、仕事のコント ロール度、ソーシャルサポートの具合を調整したオッズ比を算出しました。その結果、ワーカホリック点数が 低い人に対し高い人は、高度うつ状態である傾向が3倍以上有意に高く、過去1年に腰痛で支障をきたして いた傾向も約2倍有意に高いという結果でした。

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